第12章 実力社会
まぁ、これやアルコール消毒を頻繁に繰り返しているから爪が弱くなっているのは事実だけど。
手を洗い終えると両手を胸の前で上げながらオペ室へ入って行く。
オペを終え、再び手を洗う。
「手術着も一式捨てるんですよね」
「当たり前でしょ」
何を今更。
「神那先生のオペ、流石でした。
やっぱり凄いですね」
「…どうも」
凄いとはどういう意味なのか分からないけど。
「さっきの話、覚えてる?」
なんて言って切り出せば良いのか分からず、精一杯の不器用な言葉を紡ぐ。
「人の心のことですよね」
「そう」
水滴を丁寧に拭いながら頷いた。
「人の心って利益不利益だけじゃないと俺は思ってます。
もちろん利益の為に生きている人は居ます。
10パーセントの人も80パーセントの人も居ると思います。
けど100パーセント利益の為に生きてる人ってやっぱり居ないと思うんですよね」