第11章 救命の世界に奇跡はない
「それに瑠璃はそんな状態になってまで生きることを望んでない」
「でもっ…まだ助かる道は…」
くどい。
「これ、なんだか分かる?」
2つ折りにされたポストカードサイズの紙を瑠璃の机から取り出し、見せる。
「これ…!」
驚きを隠せない様子。
「これはDNRカード」
どうやら訳が分かっていないようだから、実物を見せた。
「そんな…どうして…」
【DNR】
蘇生拒否のこと。
末期の疾患などで蘇生処置を行っても回復の見込みがない場合、自然な死亡の旨の意思表示。
いわゆる尊厳死を望むこと。
「どうしてって?
そんなことも分からないの?
意識もなく繋がれたままただ生かされてるのなんて家族も本人も望んでない。
最後ぐらい人間らしく、好きなように過ごして貰えば良い。
そういう考えなの。
君の個人的な感情を治療に挟まないで」
「でも…でも…」