第11章 救命の世界に奇跡はない
「先生、どうぞ」
AEDを看護師から受け取り、救命措置を施す。
3度の電流による治療を終えるも容態は変わらなかった。
「もういい、止めよう」
これ以上やっても改善出来るという保証はない。
やるだけムダ、というやつだ。
「どうして止めるんですか⁉︎
まだ…まだきっと助かりますって!
だから続けてください。
お願いします、神那先生っ」
私の手を取ると必死に頼み込む。
なぜ他人の為にここまで出来るのか。
「これ以上やっても “ ただ生きてるだけ ” になる。
ううん、機械に “ 生かされている ” 状態が正しいかもしれない。
自分の力で呼吸すること、感じること、食べること、歩くこと。
目を開けることさえも出来ない。
生命反応がある、イコール生きている。
私はそうは思わない。
延命装置で生き長らえているだけ。
それは本当に生きていると思う?
“ 生きてる人間の姿 ” だって言えるの?」
その手を振り払いながら続けた。