第10章 公認と非公認
「でも神那先生は神の手の持ち主で…」
「神の手なんてないよ。
例え神の手を持つと言われる医者が居たとしても、その能力を発揮するのは最新の医療設備が整った手術室の中だけの話だよ。
何もない現場では何も出来ない、研修医とほとんど変わらないんだよ。
現場で出来ることっていうのは限られてるの」
「じゃあ…。
もしオペ室の中だったら助けられたかもしれないってことですか?」
「救命の世界に… “ もしも ” はないんだよ」
神崎の冷たい瞳が紫音を射抜く。
「まぁ、現場に行けば分かるよ」
すぐにいつもの緩んだ顔に戻った神崎。