第10章 公認と非公認
「水原…」
「はい?」
「人の死に恐れない医者には命を選ぶ力はあらへん。
俺かて臆病やから患者に細心の注意を払う。
死を恐れてありったけの経験、知識、腕を使ってなんとか患者を死の淵から引きずり戻そうとする。
…そして全ての努力のあと知るんや。
それでも救えへん命があるっちゅうことをな」
笑顔の消えた真剣な表情の藤代先生。
「え?」
「これが俺の持論で、神那さんから学んだことや。
いくら医者でも助けられないもんはある。
それは神那さんやって例外やない。
神那さんは医者である前に人間や。
当然不可能やって存在する。
それを忘れたらアカンで?」