第10章 公認と非公認
「私が乗る、君も明日乗って。
フライトドクターは君で、私はその付き添い。
全ての判断を任せるから。
…現場がどういうものかは直接目にし、感じた方が早い。
生半可な覚悟じゃダメだってことも」
“ 覚悟 ” という言葉を軽々しく口にする人も嫌いだ。
覚悟なんてものはそう簡単に決まるものじゃないから。
自称覚悟がある者に、一生それを背負う覚悟はあるのか。
と問えば答えは大体ノーだろう。
少しは背負うが全ては背負わない。
それが正論であるからだ。
特に医者という職業ではそうだ。
患者の悲しみまで背負う必要はない。
それらを背負うのは家族の役目だから。
覚悟とは人によって違う。
私の覚悟は…。
「私浮田さんのところへ行って来る。
着いて来なくて良いから」
フェローを置いて病室へ向かう。
私の覚悟は “ 治療に一切の感情を挟まない ” こと。
それが出来れば迷うこともなく命を救うことが出来るのだ。