第10章 公認と非公認
「なるほどね。
あの歳なら一般的には小柄だし、狭いとこに挟まってたら分かんないもんね」
神崎は感嘆の声を漏らした。
「でも助かって良かったですね。
神那先生に診て貰えるなんてその子も運が良いですよ」
嬉々として語るフェロー。
「水原…無線聞いてないん?」
呆れたような顔をする藤代。
「え?」
対してフェローは素っ頓狂な声を上げた。
「子供は死んだ。
母親の意識が戻ったら伝えるつもり」
「死んだって…嘘ですよね?
だって神那先生が診たんでしょう?
だったら死ぬ筈…」
目を見開いて大袈裟な反応を示す。
「発見されるまでにかかった時間は50分以上、正確には56分。
発見された時にはもう体温が下がり、血圧が低下し、心拍が弱まり、脈が触れにくく、自発呼吸が出来ない状態だった」
事故直後ならともかく、あれだけ時間が経っているとなると最早回復は絶望的としか言いようがない。