第10章 公認と非公認
「神那ちゃんね、認めてくれたら香水くれるみたい。
その人に合ったものをね。
僕が香水あげたらなんか恒例になっちゃったみたい」
“ この間のお返し、意味は自分で考えて ”
なーんてぶっきらぼうに言われた。
「俺はミントやで。
意味は美徳、効能」
「僕はラベンダーだよ。
意味は沈黙、期待、不信感、疑惑」
それぞれにちゃんとした意味がある。
「俺は貰えるんですかね?」
「それは水原ちゃん次第だと思うよ。
名前で呼んで貰えるようになったら、その内貰えるかもね」
「頑張ります」
「頑張らなくて良い。
どうせ認める日は来ないから」
面倒そうに髪をかき上げ、ステーションへと脚を踏み入れる神那。
「それは言葉の代わりに渡したもの。
言葉で言うのは得意じゃないし、言葉じゃあとに残らないから。
物なら形に残るし手っ取り早い。
ただそれだけ」
隣の席へと腰を下ろす神那先生からは爽やかなシトラスがほのかに香った。