第1章 神の手と称される者
「私には関係ないからどうでも良いんだけど。
彼が目を覚ましたらすぐに分かること。
例え弱みを握られていたとしても警察の前なら嘘なんてつかないんじゃない?
罪に問われるし。
どんな理由であれそんなことしててもあんたの首が飛ぶだけ」
目を逸らさず告げた。
「神那ちゃーん、CT結果出たよ。
異常なし、軽い脳震盪だったよ。
肩の骨折もそこまで酷くないから退院も近いかな?
あとは他の医師に任せるね」
処置室からひょっこり顔を覗かせ、告げる神崎。
「把握した。
と言う訳で意識が戻るのは時間の問題。
どうするかは自分で決めて。そのぐらい自分で分かるでしょ」
もう話すこともないから、それだけ告げて背を向け歩き出す。
人を庇って一体何になる。
どんな世界にもコレは存在する。
海外でも、国内でも、職場でも、学校でも。
正義を掲げる警察も、命を扱う病院も、全部全部。
偉い人の汚職は下っ端が処理する。
上の人間は混乱させない為と銘打って自分の地位や名誉を守る為。
下の人間は上の人間を庇うことで恩を売り自分が優位に立つ為。
くだらない、それじゃ誰も納得しない。
いくら上の人間だとしてもミスはミスだと公表するべき。
例え世の中を混乱に陥れることになったとしてもきちんと対処するべきだ。
ミスしたあともなんの処罰も受けずソレを続けるなんてことはあってはならない。
ソレは自分だけでなく周りの人生まで大きく変えてしまう。
いや、自分よりも周りの人生を大きくねじ曲げ、歪ませ、修復が不可能なまでに壊しかねない。
*****
談話室へ行き、ココアを買おうとしていると……。
「はい、神那ちゃん。これあげる」
神崎がココアの入った紙コップを差し出した。
談話室はどこか落ち着く空間になっている。
壁は病院だからということもあるのか汚れ知らずな白色。
窓もあり外の景色も見ることが出来る。
四角い形でクリーム色の長テーブルが1つ。
そのテーブルの上には旧型のパソコンが1台。
そして机のサイドに茶色のソファーが2台ある。
「これは貰うけど別に私は疲れてない。
少し気が立ってるだけ」
談話室には飲みものを注ぐ機械があり、コーヒーやココア、緑茶などを自由に選んで飲むことが出来る。