第1章 神の手と称される者
「それはあとで説明するから、彼を突き落とした人呼んで。
その人に直接話聞くから」
「え?ちょ、ちょっと!神那先生⁉︎
突き落としたって……」
「な、何言ってるんです?先生。
突き落としただなんて……彼は自分で脚を滑らせて落ちたんですよ」
同じような反応をする2人。
誰かを庇ってなんの得になる。
「そっちこそ何言ってるの?
あの子は突き落とされた、突き落とした人は当然警察へ突き出すべき。
下手をすると命に関わることだし、悪ふざけでしたじゃ片付けられないでしょ」
それが普通。犯罪だから。
どんな理由があっても人を突き落として良いことにはならない。
それ相応の処罰は受けるべきだ。
「な、何言ってるんですか先生。
生徒を売れる訳ないでしょう‼︎私は教師ですよ!」
そんなに声を荒げられても聞こえているし、何より私は考えを変える気はさらさらない。
周りに人も居ないから騒がれても問題はないし。
それに……。
「突き落とした人生徒なんだ」
あっさり話しちゃってるし。
カッとなりやすい性格か、元から口が緩いのか。
この程度のそとで話してしまうなんて教師に向いてないんじゃないのか。
「あっ……」
一瞬でしまった、と言う顔になる。
「いや、その……今のは違くて、えっと本当は……」
今更誤魔化したって無駄に決まってる。
医者を舐めないで欲しい。
誰よりも目の前の患者と向き合ってるんだ。
簡単に誤魔化せる訳ないだろう。
「庇ってても警察が調べればすぐに分かること。
消防も出てる訳だからこっちが1言添えれば簡単に動くと思うよ。
庇うだけあんたの立場も悪くする。
その落とした子に、立場を押してまで庇うような価値があるとは到底思えないけどね」
「だ、だから何言って……」
往生際が悪い。
人間のこういうところが面倒くさい。
誰かを庇って何になる。