第9章 医療現場に差別あり
神崎に言われた通り、真っ先にステーションへと戻る。
本当なら1度宿舎に戻ってシャワーを浴びたいところだけど。
暑い中処置したから身体が汗でベタベタだ。
「お疲れさん、神那さん」
スッとアイスココアを差し出す藤代。
「それよりなんの用?」
それを受け取り、顔を向けることなく尋ねた。
返答のない神崎に苛立ちを覚え、顔を向けると…。
「起きて」
人を呼びつけたのに呑気に机で眠っていた。
「いてて…何するの?」
そんな神崎の頬をつねると痛みに目を覚ます。
「それはこっちのセリフ」
「んー?あぁ、僕が呼んだんだったね。
ごめんごめん」
なんとも心の籠っていない謝罪だ。
「あの患者さん、また言って来たみたいだよ。
執刀医を変えて欲しいってね」
つねられた右頬を右手でさすりながら神妙な面持ちで口を開いた。
神崎の言うあの患者さんとは。
3日前から入院している浮田華子、47歳。
職業はホステスのオーナーである。