第9章 医療現場に差別あり
「ヘリだけど。
備品の補充をしてる」
その証拠にほら、神崎の電話からはガヤガヤと人の声が多く入っているから。
『いつ頃終わるの?』
私が補充をしていることに関しては何も言わない。
「もう終わる」
「じゃあさ、終わったらそのままステーションに来てくれる?」
「分かった」
最初からそのつもりだ。
電話を切り、作業を進めて行く。
「補充終わった、ありがとう」
操縦士に礼を言い、ステーションへと戻る。
医者は患者が死ぬことに免疫をつけなければいけない。
でも普通の人間は人が死ぬことに慣れてはいけない。
医者は神などではなく人間だ。
だが、普通ではない。
人間であるが人間でない部分を持つ。
微妙なところに我々は立っている。