第9章 医療現場に差別あり
操縦士に許可を貰い、補充を始める。
作業を始めてから数刻と経たない内に…。
「何?」
左胸ポケットに入れてあるPHSが震えた。
このユニホームは左胸にポケットがあり、そこへ首から提げたPHSとライトを入れている。
PHSをそのままぶら下げていると何かと邪魔だからである。
右上にある斜めカットのポケットはヘリ専用無線機を入れる為だけに作られたもの。
この無線機の重みはこの先一生忘れることはないと思う。
命と責任の重さである。
そしてユニホームの下ポケットに聴診器を入れてある。
人によって聴診器の持ち歩き方は様々だが、いつ出動するか分からないフライトドクターは最小限のものだけ、邪魔にならないようにしている。
そうでなくては重過ぎて走るのが遅くなってしまうのだ。
『何ってキツイねぇ。
今何してるの?どこ?』
恐らくオペや手洗いが終わり、ステーションへ戻るまでの廊下からかけている神崎。