第9章 医療現場に差別あり
目を閉じ、冷静になってから病院に一報を入れる。
「こちら亜城西ドクターヘリ。
患者情報なし。
発見が遅れ、蘇生は施したが発見から約20分後死亡を確認した」
『亜城西了解です』
無線越しに近藤の声が聞こえた。
普段は患者情報を伝え、それを向こうで手持ちのフリップに記入する。
ヘリが病院に到着したが患者が居なければ外で待っている人間も居ない。
全くの無人だった。
ヘリを降りる際に足りない備品をチェックする。
足りないのは輸血用血液ぐらいか。
そのまま処置室へ脚を運び、人手が足りているか確認する。
「神崎先生ならオペ室に入られましたけど。
もうすぐ終わるそうですが?」
と、作った笑顔を浮かべる恵。
「そう」
それに返事をし、使った分の機材を持ちヘリに補充に向かう。
本来ならばフライトナースの仕事であるが、処置室に居ないとなると恐らくオペに入ったのだろう。
備品整理ぐらいナースでなくとも出来ることだから。