• テキストサイズ

【医療】Leben 〜レーベン〜 <修正中>

第1章 神の手と称される者


「あのっ、どちらへ行かれるんですか?」



またも着いて来るフェロー。



「患者の付き添いである担任のところ。
待合室で待ってる筈だから」
「どうしてですか?
説明なら詳しい検査結果が出てからの方が……」



いちいち煩い。



「説明じゃない」



第一説明だったとしてもそんな無駄なことはやらない。
こんな軽傷患者の告知なんてなんの役にも立たない。
私がやるならオペの説明の方がよっぽど向いている。
人の心を労るなんてことは私には出来ない。



「説明じゃないなら一体何しに行くんですか?」
「それぐらい自分で考えて、医者でしょ?」



1度立ち止まり、目を見据えて話す。
救命の医者ならこのぐらい分かる筈。
治療した場所に居たのなら尚更。



「確かに医者ですけど……」




1言どころか、2言も3言も足りない神那。
そしてまた足早に歩き出し、担任と思われる男の前に立ち止まる。
待合室にはこの男が居るだけだった。
私が前に立つと項垂れていた男がゆっくりと顔を上げた。



「あの子の担任?」



担任の顔はまさしく顔面蒼白。
目は虚ろで焦点が合っていない。



「は、はい。そうです」



寝癖のついた黒髪のヒョロッとしたなんとも頼りなさそうな男だ。



「あの……彼は大丈夫なんでしょうか?怪我の具合は?完治までの期間はどのぐらいですか?」



パッと立ち上がり尋ねて来る。
そして、いかにも担任が言いそうな言葉。
そんなに懇願するような目で見られても困る。
あの程度なら放っておいても死にはしない。
ヘリや消防なんか呼ばず、救急車で病院へ行くのが最適だった。
いくら気が動転していたといってもそのぐらいのことすら考えられないとはね。
/ 223ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp