第8章 助かる、助からない
現場は山道。
見通しが悪い訳ではないが急なカーブが連続してある。
スピードを出し過ぎたり、雨上がりは危険だろう。
上手くカーブしきれず横転、かな。
下への転落こそ間逃れたが車が受けた傷は大きい。
車体の半分以上がひしゃげ、原型を留めていない。
横転した先にあったガードレールにぶつかったのだろう。
「……ん?」
横転した白い車のドアの隙間から滴り落ちる真っ赤な血液。
まぁ、事故だから血ぐらい流れるよね。
何かが引っかかるがそれが何か分からない。
何気なく患者に目を向けるとその違和感の正体に気がついた。
この患者は流血という流血はしていない、と。
頭の方はぶつけた拍子に少し皮膚が切れただけであり、心タンポナーデは身体の内側に血液が溜まるもの。
この患者の血とは考えにくい。
けど血が流れているのも事実。
この血は一体何?
他の液体の可能性も考えられたけど、私が血液を見間違える訳がない。
疑問が拭えず、車体に近づく。
この血液は車の中から流れ出ている。
考えられる可能性は1つある。
「レスキュー、ちょっと来て」
患者救出を行ったレスキューを呼ぶ。
中をもう1度確認して貰う必要がある。
私の考えが正しければ……。