第8章 助かる、助からない
意識レベルは開眼、発生、運動機能を見て判断する。
健康な人、つまり最大は15であり最低は3。
この患者の場合は6である。
辛うじて意識があるが話すことは出来ない、という状態だ。
痛みも辛うじて感じている程度。
続いて胸部の診断に移る。
「神崎、脳の方は?」
「頭部打撲による裂傷。
脳へのダメージは見られない、問題ないよ。そっちはどう?」
「心拍数が徐々に弱まって来てる。
神崎、脳が問題ないならヘリからエコー持って来て。
FAST(ファスト)やるから」
「オーケー」
【FAST】
お腹の中や心臓周囲、胸の中に出血があるかどうかを確認する超音波検査のこと。
【いざという時の為の簡易な見極め方】
Face(顔)
顔に左右で歪みがないか、上手く笑えるか。
Arm(腕)
両手を空中で保持出来るか、片方の腕が重力に負けて下がっていないか。
Speech(会話)
いつもと同じように会話出来るか、呂律が回っているか。
Time(時間)
発症から治療までの時間が勝負。
エコーを待つ間、心臓マッサージを始める。
早急に処置しなければ心臓が止まる。
モタモタなんかしてられない状況。
「持って来たよっ」
息を切らせている神崎からエコーを受け取り、FASTを見る。
ゆっくりと皮膚にエコーを滑らせて行くと、心臓部位に血液の貯留があるのをが確認出来た。
これは……。
「液体貯留がある。心タンポナーデの可能性が高い。
このままじゃ病院まで持たない。
ここで開胸する、神崎は挿管して」
溜まった血を抜かないと、血液が邪魔をして心臓の鼓動の邪魔をしてしまう。