第8章 助かる、助からない
考えごとをしながら歩いているといつの間にかステーションの前まで来ていた。
「バカバカしい」
何をそこまで考え込む必要があったのか。
ステーションへ入るとそれぞれの机の上に買って来たものを雑に置いた。
「ありがと、神那ちゃん」
「おおきにな」
ココアを入れ、いざ飲もうとコップを傾けると…。
RRR…。
電話が鳴った。
仕方なくコップを置き、受話器を取る。
「亜城西救命センター」
『日吉消防よりドクターヘリ要請です。
患者は鈴木美樹さん、32歳女性。
車で道路を走行中誤って転倒。
そのまま車に挟まれている模様です』
「どこを挟まれてるの?」
『胸です』
「救出までどのぐらい?出血は?」
『もうまもなく救出出来ます。
出血はそこまで出ていません』
そこまで?
「正確に教えて」
この業界ではおおよその数値が命取りになる。
情報はより正確に把握しなければならない。
そんなことも分からないのか。