第8章 助かる、助からない
1番混雑する時間帯の廊下をスタスタと歩いて行く。
途中途中でかけられた声の大半は同僚からの形ばかりの挨拶だったので無視した。
“ 仕方ねぇ、機械に睨まれでもしたら飛ばされかねねぇからな。”
そんな目をしていた。
私をこの病院に引き抜いたのは外科部長の青島であり、私の自由を許しているのは病院長であるからだ。
恐らく私が告げ口すれば自分の首が危ない、とかそんなことを考えたんだろう。
…くだらない。
たかがそんな理由でしたくもないご機嫌取りをするなんて。
売店へ入ると迷うことなくお弁当売り場へ脚を運んだ。
この時同じく選んでいた医師がハッと息を飲んだのは言うまでもないだろう。
そして別のものを見るようにしてさり気なく距離をとった。
告げ口をしたところで一体私になんの利益があるのか。
加えて言うならそんな私情を私が挟みそれを病院の長が許すとでも思うのか。
いつから医者は実力主義から権力主義に成り下がったのだろう。