第4章 犯罪係数2
「これから会う連中を、同じ人間と思うな。」
装甲バンの到着を見ながら、厳しい口調で宜野座が言う。
「奴らはサイコパスの犯罪係数が規定値を超えた人格破綻者だ。本来ならば潜在犯として隔離されるべきところを、ただひとつ許可された社会活動として、同じ犯罪者を駆り立てる役目を与えられた。――奴らは猟犬。獣を狩るための獣だ。それが執行官。君の預かる部下たちだ。」
潜在犯である執行官は、たとえ事件捜査中でも野放しにはできない。彼らを制御するのが、厚生省キャリア監視官の仕事だ。
護送車から降りて来る執行官を見ていた朱は、一人の男に声を上げる。
「――コウガミ、シンヤ?」
自分の名前を呼ばれて、狡噛はその視線を朱に向けた。
「――あぁ。お前か。久し振りだな。相変わらず――、似てねぇな。」
それが嘲笑に聞こえて、朱はキッと厳しい視線を向ける。
「お姉ちゃんをどうしたの?!それに――、執行官だったの?!」
「――綾の行方なら俺が聞きたいぐらいだ。」
スーツの襟を掴んで来た朱の手を押さえながら、狡噛は唸るように言った。
そんな二人の様子を見ていた宜野座は口を挟む。
「私情はそこまでにしてもらおう。今は人質の保護と大倉の確保が最優先だ。全員、対象のデータには目を通してあるな?今から袋のネズミを締め潰す。二手に分かれて順繰りに行く。制圧したエリアは中継器を配置してドローンに引き継がせろ。」
冷たい声でそう告げれば、宜野座はコンテナからドミネーターを取り出す。
「六合塚と縢は俺と来い。あとの二人は――、常守監視官に同行しろ。」
妙に聞き慣れたその名前に、言った張本人の宜野座が一番複雑な思いを感じていた。
その思いを振り切るかのように、宜野座は一瞬だけ狡噛に視線を寄越してから廃棄区画へと入って行く。それを追うように六合塚と縢も路地へと姿を消した。
取り残された朱は困ったように征陸と狡噛を見る。
わたしのいない世界でもわたしのこと思い出してよ