• テキストサイズ

レゾンデートル【PSYCHO-PASS】

第2章 犯罪係数


護送車の中で、狡噛慎也はずっと目を瞑っていた。
その横で縢が楽しそうに喋っている。

「今日からだよね?新しい監視官が来るの。可愛い女の子かなぁ?」
「さぁね。」

六合塚が興味無さそうに呟けば、縢はそれでも尚口を開いた。

「常守朱――、監視官か。歴代稀に見る優等生、ってね?」

その名前に、狡噛は閉じていた目を開けた。

「お?狡チャン、気になるの?」
「――別に。」

そんな狡噛を前に座っていた征陸は苦笑しながら見る。

「――因果なモンだな。」
「アイツが呼んでるのかも知れないな。」

その言葉の意味が分かるのは、3年前既に公安局にいた征陸と六合塚だけだ。
しんみりとした3人に、縢は不服そうに唸った。

「なんだよ、3人で。俺には内緒なわけぇ?」
「拗ねるな。ホラ、着くぞ。せいぜい新しい飼い主サマに尻尾ふっとくんだな。」

そう言った狡噛の目はもう過去を映してはいなかった。






ビューティフル・アゲイン









同じ頃、前を歩く槙島の背中を見ながら綾は珍しく昔を思い出していた。
あの頃、まだこの世界が綺麗なものだと信じていた私。
そんな私の世界の半分を占めていたのは、狡噛慎也と言う男だった。

「――バカみたい。」
「ん?何か言ったかい?」
「ううん。なんでもない。」

振り返った槙島に笑顔を浮かべて答えれば、綾は彼の横に並んでその手を取った。

「手を繋ぐって本当はすごい行為だって知ってたかい?」
「自分の空間に相手を受け入れるから?」
「そう。今君は僕を受け入れてくれてるのかな?」
「聖護はいつも行動に意味を求めるのね。」

クスクスと笑う綾に、槙島は不思議そうに首を傾げる。

「と言うと?」
「私は今聖護と手を繋ぎたいから繋いだだけ。別に深い意味なんてないのよ。」
「そう言う即物的なところ、好きだよ。」
「ありがと。」

雨が降っていた。
あの日も、しとしとと雨が降っていた。
/ 23ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp