第7章 狂王子の帰還
私という俗物
「綾。僕は少し出掛けて来るよ。もしかしたらしばらく帰れないかも知れない。」
窓際で映画を見ていた綾に、槙島は後ろから声を掛ける。
「どこに行くの?」
「桜霜学園。ちょっと面白いオモチャを見つけてね。」
「また誰か誑かして来る気?浮気者。」
どこか楽しそうに言う綾に、槙島は両手を上げた。
「とんでもない。誓って潔白だよ、僕は。」
「そう言う事にしといてあげる。早く帰って来ないと出て行くかもよ?」
クスクスと笑いながら首に腕を回して来る綾に、槙島は宥めるように口付けた。
「そうしたらまた僕は君を捕まえに行くよ。どこへでも。」
「――行ってらっしゃい。」
綾は耳元でそう呟けば、槙島から手を離す。
槙島は名残惜しそうにもう一度綾に口付けて、部屋を出て行った。