第5章 誰も知らないあなたの仮面
『犯罪係数、32。公安局刑事課登録データに照合中。元・登録監視官のデータと一致。』
「――?!」
ドミネーターから聞こえた音声に、狡噛は目を見開く。
まるであなたがいるようだ
「――お前は、まさか?」
『警告。元公安局刑事課所属、常守綾監視官。執行官による監視官――。』
それ以上は頭の中に入って来なかった。呆然と立ち尽くす狡噛に向かって『タリスマン』は歩いて来る。ドミネーターを構えたまま立ち尽くしている狡噛を少し離れた場所にいた朱は不審に思う。
「狡、噛さん?」
「――熱狂的なファンって大変ね?」
その『タリスマン』と擦れ違う間際で、狡噛は懐かしい声を聞いた。
それは探し求めていた綾の声だった。
「――綾?!」
「え?!」
狡噛が叫んだ名前に、朱は思わず振り返る。
けれどももうそこには先ほどの『タリスマン』はいなかった。