第3章 12月25日(土曜日)
『今から、会えないか?』
12月25日23時43分。
烏養さんからのいきなりのLINEにベッドから飛び起きる。
『遅くに悪い。でも顔だけ見たい』
『どこに行けばいいの?』
『おまえの家の前に車停めてる』
うそ!?
急いでカーテンを開けると、いつもの4WDが留まってる。
『今いく』
パジャマの上にダウンだけ羽織って、ベランダに出る。
親はまだ起きてるみたいで、階下には電気がついてる。
玄関からは出てけない。
うちの親は変なとこで結構厳しい。
孝支の部屋にいくのと同じ要領でベランダの手すりからうちと菅原家の間にあるいちょうの木に渡り移る。
小さい頃からよくこの木を伝って家を出ているから目をつぶっても降りられる。
あ、はだしだった……
ま、いいか。
4WDの後方から近付いて窓ガラスを叩く。
「っ、おまえ、どっから来たんだよ!?」
「ベランダ」
助手席に乗り込むと、暖房の効いた室内でかじかんだ手足がほっと緩む。
「やっぱり外寒い」
「ばっか、あたりまえだろ、そんな恰好で」
「だってクリスマス、あとちょっとで終わっちゃうから」
車のデジタル時計は23:48分。
あと10分ちょっと。
「……もう今日は会えないと思ってた、から」
結局先週の週末に言い合いして別れてから、一度も会えなかった。
「……悪かった」
「別に、烏養さんが悪いわけじゃないから……」
烏養さんは忙しい。
烏養さんは誠実。
孝支にちょっと説教されて、大人って高校生より忙しいってことも自覚した。
だから、我儘言ったらダメだってことも……
「なんかおまえが素直だと、気持ち悪い」
「なにそれ、どういう意味!?」
キっと睨むと、ふわりと頭を抱え込まれる。
チュッ、と唇にキスされて、いつものタバコの匂いが鼻をくすぐる。
「……っ」