第4章 清水潔子の考察
「清水さん、そういえば昨日、烏養コーチに呼び出されてましたよね?」
練習後の後片付けをしていたら、仁花ちゃんが怪訝そうに尋ねてきた。
「なにか問題でもあったんですか?」
「違うから心配しないで」
「でもコーチ、すごく真剣な顔してましたよね……?」
「うん、まあ……」
『清水は、プレゼントに何をもらったら嬉しいんだ?』
いきなり用具室に連れていかれて訊かれたのがこの質問だ。
『プレゼント……、ですか?』
『そうだ』
『誕生日にですか?』
『違う……クリスマスだ』
ああ、とカレンダーを思い浮かべた。
次の週末はクリスマスだった。
『高校生の女子っつうのは……どういうものが欲しいのかと思ってなぁ』
どうやらコーチは高校生の女子にプレゼントをあげなくてはいけないが、何をあげていいのかわからず困っている、ようだ。
『実用的なもの、でしょうか』
清水潔子は、あまり可愛いものには興味がない。
自分と趣味のあわないものをもらうのも困る。
だったら、実用的で消えてなくなるもののほうが嬉しい。
『これまででもらって嬉しかったものはなんだ?』
『ハンドタオル3枚セットとか、ハーブティーの詰め合わせとか、××ケーキの3000円チケットとか……』
どうやら今言った答えは、コーチにとって正解ではないらしい。
渋い顔して腕を組んでいる。
『あの、別にコーチが選んで送ったものなら、なんでも嬉しいと思いますよ、きっと』
『……そうか?』
『女って好きな人からもらったものなら何でも嬉しいから』
『……そうか』
礼を言って片づけに戻ったコーチの後ろ姿を見つめる。
どうやら年下、下手すると高校生の彼女らしい。
コーチに彼女がいること自体初めて知った。
私と同じ高校生か……
語るに落ちるですっかりばれてるコーチだけど、そこが可愛いのだ、彼は……