第1章 12月18日(土曜日)
「おまえ馬鹿だな~」
呆れ顔200%の孝支は、ぱくっとアイスキャンディーにかぶりつくと、
「ホント、馬鹿」
シャリシャリしながらダメ押しする。
「真冬にアイス食べるほうがバカじゃん」
しかもベランダで。
「おまえ冬のアイスなめてるだろ」
ベランダ越しの孝支は、ハーフパンツにTシャツと見るからに寒そう。
烏養さんとのこと。
相談できるのは隣に住んでる孝支だけ。
家が隣同士で幼稚園からずっと一緒の孝支が知らないことはないし、私が考支のことで知らないこともない。
「私とバレーどっちが大事って、それ言っちゃおしまいだろ……つか、すげぇ乙女だったんだな、おまえ」
自分でもわかってる。
こんなこと言うキャラじゃなかったはずなのに……
「男はそういう二択迫られるとなえるだろ、普通」
「なえるって……」
「面倒くさくなるってこと」
やっぱり。
「特に烏養コーチは、年上だし。バレー部のコーチ以外にもいろいろ大人の付き合いってもんもあるだろうし」
「そういうのに優先するのが彼女じゃないの?」
「……かもしれないけど、それ押し付けられると面倒くさくなるっつうの」
「でも全然一緒にいる時間ないんだよ?」
「しょうがないだろ、俺ら男バレは今が踏ん張りどころなんだし」
わかってる。
わかってるけど……
「なんか、本当に好きなのかなぁって思って」
「は?」
「本当に好きなら、ちょっとでも一緒にいたいとか、思うものじゃないの……?」
たった5分でも。
ちょっとだけでも触れたい、とか。
かすめるだけでもキスしたいとか。
「まあそうだけど……」
なんか孝支、納得してない顔。
「なんかおまえ、いろいろ望みすぎてないか?」
孝支は、小さいころから理論的で冷静。
だから、迷った時は、いろいろ相談してきた。
「もっと烏養さんのこと、信用してやれよ」
「してるよ、してるけど」
「ほら、その「けど」が信用してない証拠だろ」
「コーチはいい人だよ。なんでもいい加減にできない人だから、いろいろ不器用に見えることもあるだろうけど」
烏養さんのこと良くわかってる言い方。
それすらも、ちょっと腹立つ。
孝支の方が私より彼のこと知ってることで、心がささくれ立つ。
どうしちゃったんだろう、私……