第9章 揺れる心
学校に着くと、いつもの待ち合わせ場所に七瀬がいた。
「あ、おはよう徹。シュリは?」
「…知らね。」
「知らねって…いつも一緒に登校してるじゃない。」
「うるせぇな、知らねーって言ってんだろ!」
七瀬を睨み付けるが、七瀬は全く動じなかった。
「ケンカでもしたの?」
「あいつが…池田と付き合い始めたんだよ。」
「池田…ああ、直人さんね。それで気にくわなくてシュリと一緒じゃないのか。」
俺は七瀬に一連の話をした。
そして何故か、自分の過去の話もしてしまった。
もしかしたら、ずっと誰かに聞いてほしかったのかもしれない。
全てを聞いた七瀬は、俺の後頭部を鞄で思いきり殴った。
「なんだよ!」
「あんたの境遇には同情するし、シュリを好きになった理由も理解できる。ただ直人さんを毛嫌いするのはただの逆恨みだしそれに…」
七瀬は俺の胸ぐらを掴んだ。
「出逢わなきゃ良かったなんて、言うんじゃないよ。シュリが普段どれだけあんたのこと考えてると思ってんの?」
七瀬は俺を突き飛ばすと、学校とは逆方向を指差した。
「帰って謝りな。」
「どうせアパートで池田に慰めてもらってんだろ…。」
「ああ、もう!女々しいな!いつもの俺様徹様はどこに行ったのよ!早く行け!!」
七瀬の気迫に圧倒され、俺は渋々アパートに戻った。