第9章 揺れる心
挫いた足と、転んだ時に擦りむいた膝が痛む。
でも、何より痛むのは心だった。
「お前と出逢わなきゃ良かった。」
徹の言葉が深く深く、胸に突き刺さった。
挫いた足に触れると、腫れていた。
こんな状態で学校まで歩いて行くのは無理だ。
何とかして、アパートに戻ろう。
「朝から元気だねー。」
突然耳元で話しかけられ、驚いた。
すぐ隣に、紫音先輩がしゃがみ込んでいた。
…この人いつからいたの?
全く気がつかなかった。
「紫音先輩…なんで…?」
「俺の家、すぐそこだから。家出たら羽山君とシュリが言い争ってたから観察してたんだよ。」
「観察って…。」
呆気に取られる私を、紫音先輩は軽々と抱き上げた。
この細い体のどこにこんな力があるのだろう…なんて、どうでもいい事を考えてしまう。
「とりあえず、うちにおいで。」
「そんな、悪いですよ…!」
「先輩の言うことがきけないの?」
また、この表情。
口元は笑っているが、目が笑っていない。
私は黙って言うことをきいた。
紫音先輩は私を自宅まで運んでくれた。