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薔薇と向日葵

第9章 揺れる心


徹は私の手を引きながら走り続けた。

息が切れて苦しくなり、徹の手を振り払った。

「ちょっと、どこまで走る気よっ…!」

徹は肩で息をしながら振り返った。

「…お前と池田、昨日何があったの?」

「そんなの…徹には関係ないでしょ。」

「関係なくねーよ!」

徹は珍しく感情的になり、声を張り上げた。

驚く私を見て、徹は舌打ちをした。

「池田なんかに、渡さねぇ。」

「何でそんなに直人を敵視するの?」

「…俺の嫌いな男に似てるから。」

訳が解らずに首を傾げた。
徹の嫌いな男って誰…?

「とにかく、俺は諦めねぇから。」

「徹はモテるじゃん。何で私なの?」

「…お前の傍が、一番居心地がいいから…。」

徹はまた、あの悲しげな顔をした。

「…全部、あの女のせいだ。あの女が俺と親父を捨てたから…。」

徹は一人言のように呟いた。

今にも泣き出しそうな顔で。

「徹…?」

そっと近付こうとすると、徹は私を睨み付けた。

「お前と出逢わなきゃ良かった。」

そう言って徹はまた走り出した。

「待って徹…!」

追いかけようとしたが、足が縺れて転んでしまった。

すぐに立ち上がろうとしたが、足を挫いてしまったらしく、立てない。

私は、遠ざかる徹の背中を見つめることしか出来なかった。

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