第2章 出会いの春
一頻り店内を見て、少し疲れたのでカフェに入った。
店内には老夫婦と、一組のカップルらしき男女がいた。
「ってあれ、羽山さん…!?」
店内の一番奥の二人掛けのテーブル席に座るカップルらしき二人の男性の方が羽山さんだった。
派手な外見の女性の向かいに座る羽山さんは、退屈そうにスマホを弄っている。
女性…恐らく彼女の方は一生懸命羽山さんに話しかけているが、彼はたまに小さく頷くだけ。
すぐに店から立ち去りたかったが、既に注文をしていた為、なるべく羽山さん達から離れた席に座った。
最初は穏やかに話していた彼女だったが、次第に口調が荒くなり、店内に響き渡るくらいの大声で怒鳴った。
「ねぇ、私の話聞いてるの!?」
思わず視線だけ二人に移すと、羽山さんはめんどくさそうに舌打ちをした。
「うるせぇな、朝っぱらから呼び出しといて。これ渡したらすぐ帰るって言ったじゃねーか。」
羽山さんが彼女に何か放り投げた。
それは、ブランド物に疎い私でも知ってるくらい有名な時計のブランドの箱だった。
彼女は顔を真っ赤にして怒りに震えている。
その光景は誰から見ても一目瞭然、修羅場だ。
彼女は腕時計の箱を床に投げ付け、羽山さんの頬を叩いた。