第8章 お酒の味
「直人、離して。」
「…やだ。」
「やだって…。」
何となく、直人の髪の毛を触った。
パーマのかかったふわふわな髪の毛。
「なんか、直人ってホント犬みたい。」
「犬…?」
「うん、犬。」
クスクスと笑っていると、急に視界がひっくり返った。
直人にベッドに押し倒されたのだ。
「直人…?」
「俺ー…犬じゃないよ?」
「ああ…ただの例えだよ?」
「シュリさー…俺も男なんだよ…?」
直人の目からいつもの無邪気さも輝きもなくなり、真剣な瞳で私を見つめてきた。
「わ、わかってるよ…?」
「俺、シュリの事が…好き。」
そう言うと、直人は私の唇に自分の唇をそっと重ねた。
直人との初めてのキスは、お酒の味がした。