第7章 写真部
「一つだけ質問。仕事中は笑顔を絶やさないこと。これが出来るかい?」
「はい、大丈夫です!」
「それも仕事の内なら。」
「よし、では二人とも採用!」
こんなに簡単に採用されると思わず、呆気に取られた。
「あの、こんな簡単に採用しちゃっていいんですか?」
「私自身が堅苦しいのは苦手でね。一応後日、履歴書を持って来てね。」
こうして、私と徹はこのカフェで働く事になった。
アパートに着き、私と徹はそれぞれ部屋に戻った。
ベッドに座り、実家に電話をかけた。
上京してから初めて電話をかける。
「はい、明智です。」
久々に聞いた母の声。
既に懐かしく感じた。
「あ、お母さん?シュリだよ。」
「シュリ!あんた電話一本寄越さないでまったく…ご飯はちゃんと食べてるの?ご近所さんにちゃんと挨拶した?学校はどう?」
「そんなに一遍に聞かないでよー。」
苦笑いをしながらも、久々に母の声を聞いて安心した。
「ご飯もちゃんと自炊して食べてるし、ご近所さんとも仲良くやってるよ。大学で友達も出来たし…サークルは写真部に入ったの。」
「そう、とりあえずちゃんとやれてるなら良かったわ。」
「あとね、バイトも決まったよ。カフェで働くの。」
「あら、いいじゃない。お父さんが居酒屋とかは危ないイメージがあるからやめてほしいってぼやいてたから、カフェなら安心すると思うわ。」
「そっか、良かった。みんな元気?エミリは…最近どう?」
エミリとは、3歳年下の妹だ。
中学生の時に苛めにあい、引きこもりになってしまった。
昼夜逆転生活をし、毎日パソコンばかりしていて、私が引っ越す時も少し言葉を交わしただけだった。
「エミリにかわる?」
「エミリが大丈夫なら、ちょっと声聞きたいな…。」
「わかった。ちょっと待っててね。」
電話の向こうで母がエミリを呼ぶ声が聞こえた。
「もしもし、お姉ちゃん?」
久々に聞いた妹の声は、少し元気が無いように感じた。