第6章 直人の素顔
私は材料を持って直人の部屋に上がった。
「お邪魔しまーす。」
「どうぞー。部屋汚くてごめん。マジで俺の部屋になると思わなかった。」
直人の部屋はお世辞にも綺麗とは言えなかった。
部屋には脱いだ服が散らばってるし、洗濯物は溜まっているし、テーブルの上には潰したビールの空き缶がいくつも転がっている。
「直人ー、お肉冷蔵庫に入れさせてー?」
「ああ、うん。適当にやってー。」
冷蔵庫を開けると、ビールとサワーとお水しか入っていなかった。
色々思うことはあるが、とりあえずひき肉をしまった。
直人は脱いだ服を拾っていた。
「ホント汚くてごめん。」
「片付けようか?」
「いやいや、大丈夫!ちょっと適当に座ってて!」
私はテーブルの近くに座った。
直人は洗濯物をカゴに入れ、ビールの空き缶をビニール袋に捨てた。
「とりあえずこんなもんか。」
直人は一息つくとジーパンのポケットから煙草とライターを取り出した。
煙草をくわえたが、何かを思い立ったように動きを止めた。
「ごめん、煙草嫌だよね?」
「ううん。うちお父さんが吸ってたから大丈夫。ていうか直人煙草吸うんだね。」
意外な一面だ。
恐らく私の部屋では気を使って吸わないでいてくれたのだろう。
なんだか素の直人を見れた気がして少し嬉しかった。
直人は換気扇を付けて、私の正面に座った。