第5章 徹の過去
気が済むまで泣いた私は、夕飯を食べることにした。
唐揚げをレンジで温めていると、チャイムが鳴った。
「はーい。どちら様ですかー?」
「シュリ、俺。徹。」
予想外の人物の訪問。
私は玄関のドアを開けた。
「徹…なんで来たの?あの子は?」
「帰った。腹減ったから唐揚げ食いに来た。」
いつもの徹だった。
先程の事など気にしていないのか、飄々とした口調でそう言った。
本当に、気紛れな猫みたいな奴だ。
徹のペースに振り回され続けるのも癪なので、わざと意地悪なことを言ってみた。
「帰ってって言ったらどうす…。」
言い終わる前に、徹のお腹が鳴った。
徹は少し恥ずかしそうにそっぽを向いた。
それが可愛くて、思わず笑ってしまった。
やっぱり、駆け引きなんて私には向いてない。
徹の為に作った唐揚げだ。
徹に食べてほしい。
「どうぞ、入って。」
「ん。お邪魔します。」
徹は部屋に入ると初めて私の部屋に来た時の様に座椅子に座った。
私は唐揚げとご飯をテーブルに運んだ。
「ごめんね、今日はお味噌汁作ってないからこれだけなの。」
「別にいい。」
コップを二つ出して麦茶注ぎ、お箸と一緒に運んだ。
「はい、どうぞ。」
麦茶とお箸を徹の目の前に置いた。
二人で食事を始める。
徹は唐揚げを一つ頬張った。
「うまっ。」
「それは良かった。いっぱい作ったんだよ。」
「サンキュ。」
徹は次々と唐揚げを食べていく。
合間にご飯も食べて、その細い体の何処に入るのかと思うくらい唐揚げを平らげた。
「ご馳走さま。腹苦しい…。」
「徹にしては凄い食べたもんね。」
作った側としては嬉しいのだが。
徹は座椅子の背もたれに寄りかかってお腹を擦っている。
私は食器を片してテーブルを拭いた。
「…あのさ、シュリ。」
「んー?なに?」
「さっきは…ごめん。」
私はなるべく普通に振る舞った。
「もう気にしてないよー。私こそいつもお節介なことしてごめんね。」
「いや、お節介とか、迷惑とか、思ってない。本当は嬉しい。」
「え…?」
徹がいつになく真剣な眼差しで見つめてきた。