第5章 徹の過去
「徹、徹!」
女の声で我に返った。
そう言えば、コイツまだ居たんだっけ。
「帰って。」
「え?」
「お前もういいわ。帰れ。」
冷たい視線を送ると、女は顔を真っ赤にして俺の頬を叩いた。
「ちょっと顔が良いからって調子乗んな!!」
女は慌ただしく服を着て部屋から出て行った。
叩かれた頬を擦る。
静まり返った部屋で、自分が酷く滑稽に思えて思わず笑ってしまった。
「ハハッ…あーあ、シュリの作った唐揚げ食いたかったなぁ。勿体ないことした。」
ベッドに転がり、天井を見つめた。
「…また、作ってくれるかな。」
シュリにはきっと、池田みたいな男が似合うんだ。
解ってはいるが、シュリへの気持ちは日に日に増していく。
俺は服を着て、シュリの部屋へ向かった。