第2章 出会いの春
チャイムを鳴らす。
しかし、住人はなかなか出てこない。
表札を見ると"池田"と書いてある。
しばらく待ってみたが留守なのか、誰も出てこないためまた後で伺おうと思ったその時だった。
「はーい!今出まーす!」
部屋の中から大きな声がして、直後にドアが開いた。
Tシャツにスウェットズボン、髪はボサボサな背の高い男の人が出てきた。
「すみません、夜勤前で寝てて…えーっと、どちらさん?」
「あ、隣に引っ越してきた明智と申します。よろしくお願いします。」
「あー、お隣さんね!池田です、よろしくお願いします!」
池田さんは羽山さんとは違い、人懐っこい笑顔で挨拶を返してくれた。
「これ、つまらない物ですが…。」
粗品のタオルを渡すと、池田さんは丁寧に両手で受け取ってくれた。
「タオル有り難い!仕事柄結構使うんで!ありがとうございます。」
「あ、それは良かったです。」
「なにかあればいつでも声かけて下さいね。」
池田さんの言葉から下心や悪意は感じられず、素直に嬉しかった。
「ありがとうございます。それじゃあ失礼します。」
とりあえず、お隣さんへの挨拶は終わった。
羽山さんは少し感じが悪いけど、池田さんは良い人そうで良かった。
私は部屋に戻り、荷物の整理を始めた。
大学の入学式は4月上旬だ。
それまでに、この町のことを少し知りたい。
駅周辺は少し栄えていた。
明日は駅の方へ行ってみよう。