第2章 出会いの春
まずは、右隣の住人に挨拶をしに行った。
粗品のタオルを持って。
チャイムを鳴らしてしばし待つと、男の人が出てきた。
色白でスタイルが良く、顔立ちも整っているが目付きが悪い。
その人は大きな目で私を見下すように見てきた。
「なに?」
「あ、あの!隣に引っ越してきた明智と申します。よろしくお願いします。」
「あー…だから朝から煩かったのか。」
確かに午前中は荷物を運んだりして煩かったとは思うが、わざわざ口に出さなくても…。
「お騒がせしてすみません…あの、これつまらない物ですが…。」
タオルを渡し、そそくさと帰ろうとすると男の人に肩を掴まれた。
「え…なんですか?」
「ここ、壁薄いから煩くするなよ。」
初対面にも関わらず敬語も使わずに、若干上から目線な口調で言われ、呆気に取られた。
「あ…はい。気を付けます…。」
それを聞いて満足したのか、男の人は玄関のドアを閉めた。
なんと言うか、あまり関わりたくないタイプだ…。
ふと表札を見ると"羽山"と書いてあった。
羽山さん、か…。
とりあえず名前だけは覚えておこう。
次は左隣りの部屋へ伺った。