第4章 大学入学
「それじゃあまた明日ね。」
アパートに着き、部屋に帰ろうとすると、徹に腕を掴まれた。
徹はじっと私を見つめた。
「なに…?」
「…この前は、ごめん。」
その言葉で、この前の事を思い出す。
私は徹から視線をそらした。
「もう、いいよ。気にしてないし。」
「…そうか。」
本当は、まだ少し気にしてる。
しかし、いつまでも引きずっていても気まずいだけだ。
これから毎日徹と顔を合わせるのだ。
なるべく平穏に過ごしたいという気持ちもある。
「次やったら本当に許さないけどね!」
私は前に徹にされた様に、徹の頬をつねって笑ってみせた。
「いへぇよ。」
「いつかのお返しです。」
徹は微かに笑った後、またあの悲しげな顔をした。
私は手を離して徹を見つめた。
「徹?どうしたの?」
「嫌いって言われても仕方ねえことしたのは解ってるけど…嫌いなんて、言わないでくれ。」
私はあの時確かに言った。
徹なんか嫌い。大っ嫌い。と。
あの時は感情的になってそう言ったものの、私は徹を本気で嫌いにはなっていない。
「あ…あれはあの時感情的になってたから…徹のこと、嫌いになんてなってないよ。」
「俺、嫌いって言われんの苦手。」
誰だって嫌いなんて言われたら嫌な気持ちになるだろう。
しかし、徹は少し訳が違う様に感じた。
"嫌い"という言葉自体にトラウマがある様な…そんな印象を受けた。
「もう言わないから、そんな顔しないで?」
徹は小さく頷くと、いつもの表情に戻った。
「じゃあ、また明日な。」
「うん、また明日ね。」
私達はそれぞれ部屋に帰った。