第3章 危ない夜
触れるだけのキス。
泣きたくないのに、涙が溢れた。
それを見た徹は目を丸くした。
「…まさかキスも初めて?」
「だったら何なのよ…徹なんか嫌い。大っ嫌い!」
泣きながら徹を睨み付ける。
徹は無表情で私を見下ろした。
「…なんてね。冗談だよ。」
徹は鼻で笑い、私の上から退いた。
なんとか最悪の事態は免れたが、気分は最悪だった。
私はベッドから出て、部屋の隅で体育座りをした。
徹の近くに居たくない。
外が寒くなければこんな男とっくに追い出してるのに。
いや、理由はどうあれこんな男を部屋に入れた私が馬鹿だったのかもしれない。
すると、徹がかけ布団を羽織って私の目の前にしゃがみこんだ。
「泣くなよ。」
「徹のせいじゃんっ…。」
「悪かったよ。ちょっとからかっただけだって。」
「度が過ぎるよ…徹なんか嫌い。あっち行って。」
「…そんなに俺が嫌?」
一瞬、徹が悲しそうな顔をした。