第3章 危ない夜
徹があまりにも悲しそうな顔をしたから、私 はそれ以上何も言えなかった。
しかし徹はすぐにいつもの無表情に戻ると、私の隣に座り、壁に背中を預けた。
掛け布団を自分と私にかけて、私の頭を撫でた。
徹の行動とは思えない程、優しく。
「ごめん…もうしない。」
それだけ言うと、徹はそっと目を閉じた。
泣き疲れた私も、そのまま眠りについた。
翌朝、目を覚ますと隣に徹はいなかった。
ベッドの上に、昨日私が貸した服が綺麗に畳まれて置いてあった。
徹が何を考えているのか全く解らない。
複雑な気持ちを抱えたまま、私は服を洗濯した。
肉じゃがは直人には届けなかった。
今は直人の前で上手く笑えない気がしたから。
―――もうすぐ、大学の入学式。