第22章 約束の日
落ち着きを取り戻した私は、紫音先輩から聞いた話を徹に話した。
徹は小さく溜め息をついた。
「二人が決めたことなら仕方ねえな。俺達が何かしてやれるわけじゃないし。」
「そうだよね…この前七瀬から電話が来た時、もう決めてたのかもしれないね。」
二人が無事に海外に行き、幸せに暮らせるように祈ることしか出来なかった。
私達は今まで、七瀬はお金持ちのお嬢様という認識しかしていなかったが、七瀬が背負っていたものは私達の想像より遥かに大きかったのだろう。
落ち込む私の頭を、徹がポンポンと叩いた。
「お前の気持ちは分かるけど、あんま気に病むと腹の子によくないんじゃねえの?」
徹にそう言われ、私は自分のお腹に手を添えた。
「七瀬に…赤ちゃん抱っこしてほしかったな。」
「…うん。」
「七瀬、幸せになれるよね?」
「幸せになるために、別所と海外に行くんだろ?それなら大丈夫だよ。」
私は、絶対に連絡先を変えない。
いつか…5年後でも、10年後でも、七瀬から連絡が来るかもしれないから。
七瀬の笑顔が頭に浮かんだ。
いつも、私の味方で居てくれた。
最後まで、私達のことを考えてくれた。
「ありがとう、七瀬。」
何処か遠くにいる七瀬に向けて、そう呟いた。