第21章 すれ違う心
事情を話すと、二人は黙ってしまった。
室内に重い空気が流れる。
「…あいつ…。」
唐突に七瀬が口を開いた。
「大学辞めてまでシュリの所に行ったくせに…なにやってんのよ…。」
「え?徹、休学してるんじゃないの?」
七瀬は深い溜め息をついた。
「この際だから話すけど、あいつはシュリみたいに正当な理由があるわけじゃないから休学申請が通らなかったの。そしたらあいつ、大学辞めるって言い出して…あたしは最後まで止めたよ。そんなことしたってシュリは喜ばないって。でもあいつの意志は変わらなかった。」
「そうだったんだ…。」
予想外の事実に驚きを隠せなかった。
「なのに…なに事故なんかにあってんのよ。シュリのこと悲しませてんじゃないよ…。」
俯く七瀬の背中を紫音先輩が撫でた。
「羽山君は、必ず目を覚ますよ。彼がシュリを置いていなくなるわけないよ。」
「そう思いますか…?」
そう問いかけると、紫音先輩は優しく微笑みながら頷いた。