第2章 出会いの春
「さっきから聞いてれば、随分と悪い男みたいに言われてるな。俺。」
いつの間にか、徹が階段の手すりから身を乗り出して私達を見ていた。
驚いて咄嗟に池田さんの後ろに隠れる。
それを見て、徹は私に冷たい視線を送った。
「その男のことは簡単に信用するんだな、シュリ。」
「池田さんは…徹とは違うもん…。」
「そいつの何を知ってんの?そいつだって優しいフリしてお前に近付いてあわよくばヤれたら…とか思ってるかもよ?」
「池田さんはそんな人じゃないもん!」
そんな私達のやり取りを聞いていた池田さんは小さく溜め息をついた。
「二人とも、やめなよ。羽山くんも明智さんにちょっかい出すのやめな?明智さんも…羽山くんの言う通り、よく知りもしない男を簡単に信用しない方がいいよ。ただでさえ女の子の一人暮らしは危ないんだから。」
池田さんの意見は最もだった。
それに、この場を治めるためにあえてどちらの肩も持たない発言をしたのも解った。
「…ごめんなさい。」
「お前の指図なんか受けねーよ。」
謝る私とは対照的に、徹は吐き捨てる様にそう言った。
これには池田さんもお手上げ状態だ。
「指図じゃなくてさ…。」
「うるせぇんだよ偽善者野郎。」
徹のその言葉に、池田さんの表情が険しくなった。