第2章 出会いの春
私は涙を拭って立ち上がった。
「睡眠の邪魔してごめんなさい、池田さん。」
「いや、それはいいんだけど…。」
「私、部屋に戻りますね。」
無理矢理笑顔を作った。
これ以上、池田さんに迷惑をかける訳にはいかない。
池田さんはまだ心配そうな目で私を見ている。
「本当に大丈夫?」
「はい、大丈夫です。」
「あんまさ、ご近所さんのこと悪く言いたくないんだけど…羽山くんはちょっと気を付けた方がいいよ。」
「え?」
池田さんは言いづらそうに話した。
「彼さ、結構頻繁に女の子を部屋に連れてきてて…何度か見かけたんだけど毎回違う女の子だし…その、男の俺が言うのもなんだけど、危ないんじゃないかなって。」
「そうなんですか…。」
やはり、徹は軽い男なんだ。
彼にとって私も沢山の女の一人でしかないのだろう。
男性と付き合った経験が無い私でも、それくらいの事は解る。
「教えてくれてありがとうございます。」
「いや…出来たらみんな仲良くなれたらいいんだけどね。たった3人の住人なんだし。」
「そうですよね…。」
池田さんは腕を組んで困った顔をした。
彼なりに、ご近所付き合いが上手く行くように考えてくれているのだろう。
すると突然、階段の上から声がした。