第19章 徹と涼
そして、楽しく食事が始まった。
私の好物である肉じゃがと、エミリと涼の好物であるハンバーグ、徹の好物の塩の唐揚げがテーブルに並んだ。
「今日はご馳走だね~。」
エミリが嬉しそうに言った。
「みんなの好きな物作ったらこうなっちゃったのよ。」
母も流石に作り過ぎたと思ったのか、苦笑いをした。
「僕、お母さんのハンバーグ超好きだよー!」
涼はハンバーグを食べながら嬉しそうな笑みを浮かべた。
「徹君は確か、塩の唐揚げが好きなのよね?遠慮しないで沢山食べてね。」
「はい、いただきます。」
私はあまり食欲がなく、まだ何も手をつけていない。
徹が横目で私を見た。
「シュリ、食欲ないのか?」
「うーん、ちょっとね。でも気にしないで食べて?あ、ちゃんと人参食べなよ?」
「人参の話はするな。」
それを聞いていたエミリがケラケラと笑った。
「徹さん人参嫌いなのー?可愛いー。」
徹は何も言い返さず、人参を一つ口に入れた。
「あ、食べた。」
思わずそう口にしてしまった。
徹は無表情で人参を噛み、飲み込んだ。
「…別に、食える。」
エミリにからかわれたのが恥ずかしかったのだろうか…。
しかしその後、徹は一つも人参を食べなかった。
やはり意地を張って食べたようだ。
私はというと、ほとんど何も食べれなかった。