第19章 徹と涼
翌日、私は検査を受けた。
朝、徹からメールが入っていた。
"今日から仕事だから、面会は夜行く。"
新しい仕事、しかも正社員で働くのだ。
いくら徹でも、疲れるだろう。
無理はしないでほしかった。
"頑張ってね。面会は無理して来なくて大丈夫だからね。"
そう、返事を送った。
検査の結果、私は寛解状態になっている事が分かった。
「シュリさん、よく頑張ったね。」
新井先生が笑顔でそう言った。
これで、外泊が出来る。
私は久しぶりに、七瀬に電話をかけた。
「シュリ?」
「あ、七瀬?久しぶりー。」
「久しぶり!体はどう?」
「あのね、治療が上手く行って、外泊許可が下りたの。って言っても、明日から一泊二日なんだけどね。」
「そうなんだ…良かった…。」
電話の向こうで七瀬が泣いているのが分かった。
「心配かけてごめんね。」
「そんなのいいの。なかなか会いに行けなくてごめんね。」
「ううん、大学あるんだし、気にしないで?」
「紫音とか…写真部のみんなも心配してるよ。」
写真部のみんなの顔が頭に浮かんだ。
既に懐かしく感じる。
「みんなにも、明智は大丈夫ですって伝えてね。」
「わかった。そういえば、徹がそっちに行ったでしょ?」
「あ、うん…びっくりしたよ。突然来たから。」
「徹から、聞いた?」
「ん?何を?」
七瀬は一瞬黙った。
しかしすぐにいつもの調子で話し始めた。
「いや、なんでもない!とりあえず、シュリの声が聞けて良かったよ。」
「私も七瀬の声聞けて良かった。」
「シュリと徹が帰って来るの、待ってるからね。」
「うん、ありがとう。」
七瀬と電話を終えると、エミリが病室に入って来た。
「お姉ちゃん、聞いたよ!明日家に戻って来れるんだってね!良かったね!」
「ありがとう。」
「あのね、徹さんって明日の夜って空いてるかなぁ?」
「どうだろう?どうして?」
「お父さんがね、徹さんも呼んでうちでみんなでご飯食べようって。」
その言葉を聞き、私は固まってしまった。
私の父と徹は、まだ会ったことがない。
無口で硬派な父と、無愛想で軟派な徹。
母と徹の相性は悪くないが、父とは…どうだろう。
「徹に聞いてみるね。」
とりあえず、そう言った。