第18章 徹の決断
シュリが入院して5日が経った。
シュリから連絡は無いが、恐らく今、抗がん剤治療を行っているのだろう。
1日中シュリのことを考えてしまい、バイトにも、写真部にも行く気になれず、1日が凄く長く感じる。
シュリにちゃんと飯を食うように言われたが、カップ麺生活に戻ってしまった。
シュリがいなくなり、俺の日常はモノクロになった。
学校から帰り、部屋でパソコンをいじっていると、スマホが鳴った。
画面を見るとシュリからの着信だった。
まさかあいつ、話せる状態になったのか…?
電話に出ると、相手はシュリではなかった。
「もしもし?徹さん?エミリだよ。」
「エミリか…どうした?」
「あのね、お姉ちゃんに頼まれて電話したの。お姉ちゃん今、電話できる状態じゃないから…。」
エミリの声は暗かった。
「お姉ちゃん、今無菌室で抗がん剤治療受けてるの。1週間から10日くらい毎日抗がん剤打って…とりあえず、なんだっけ…寛解?っていう状態を目指してて…。」
「そうか…無菌室じゃ面会はできないよな?」
「うん…家族以外はダメみたい。」
解ってはいたが、落胆してしまう自分がいた。
「それでね…お姉ちゃん、抗がん剤の副作用で辛そうで…たまに言うの。徹に会いたい、って…。」
抗がん剤の副作用については既に調べていたが、実際には想像を遥かに超える辛さなのだろう。
苦しむシュリを想像すると、胸が締め付けられた。
「…会えるなら、すぐにでも行くんだけどな。」
「あのね、今は無理だけど…治療が上手く進めば無菌室から出れるから、そしたら家族以外の人も会えるの。」
「そうなのか?」
「うん…でもね、あんまり言いたくないんだけど…お姉ちゃん、副作用で髪の毛が抜けてきちゃってて…徹に会いたいけど、こんな姿見られたくないとも言ってて…。」
抗がん剤の副作用で髪が抜ける話はよく聞く。
俺は気にしなくても、シュリは気にするだろう。
「一応、俺は気にしないって伝えてくれるか?それから…俺もお前に会いたい、って。」
「わかった!これからもお姉ちゃんのスマホから電話かけるね。」
「ああ、ありがとな。エミリ。」
「他に何かお姉ちゃんに伝えることある?」
エミリのその問いに、すぐに答えることができなかった。