第17章 50%の約束
翌日、徹は午前中だけ学校を休んで駅まで一緒に来てくれた。
「あ、そうだ!徹、これ…入院先の病院と実家の住所が書いてあるから。」
私は徹に1枚のメモを渡した。
「サンキュ。」
「明智ー!!」
その時、聞き覚えのある声がした。
この大きくてよく通る声は…。
声のした方を見ると、七瀬と写真部の先輩達が駆け寄ってきた。
「え、みんな…!」
驚く私と母。
徹はみんなが来ることを知っていたようだ。
小山先輩が涙目になりながら私に抱きついた。
「明智さん、石川さんから聞いたよー!病気になんか負けちゃダメだよー。」
どうやら七瀬から話を聞き、先輩達も見送りに来てくれたようだ。
相田先輩は完全に泣いていた。
人目も気にせずに号泣している。
「明智、俺達はお前が戻って来るの待ってるからな!俺が卒業するまでには戻ってこいよ!」
「相田先輩…。」
桐生先輩が小さな紙袋を渡してきた。
中身を見ると、以前私が桐生先輩のドールコレクションを見せてもらった時に気に入った金髪の美少年のドールが入っていた。
「桐生先輩、これ…。」
「あなたが以前、気に入ってくれた子。長野に一緒に連れて行ってあげて頂戴。」
「でもこの子、先輩の大のお気に入りじゃ…。」
「誰もあげるなんて言ってないわ。戻って来たら返して頂戴。私の大切な子を預けるんだから…必ず戻って来てもらわないと困るわ。」
桐生先輩らしい優しさだった。
田中先輩は1冊のフォトアルバムを渡してきた。
中を見ると、綺麗な自然の写真や、可愛い動物の写真が収められていた。
「少しでも、癒しになればと思って。明智が戻って来るの待ってるよ。」
「桐生先輩、田中先輩…ありがとうございます。」
「シュリ、七瀬のことは俺に任せてね。」
紫音先輩がいつもの穏やかな笑みを浮かべて言った。
七瀬は少し照れくさそうな顔をしている。
どうやらこの二人は上手くいったようだ。
「シュリ、みんなあんたが戻って来るの待ってるからね。必ず戻って来てね。」
七瀬が目に涙を浮かべてそう言った。
「うん…みなさん、本当にありがとうございます。」
私は深く頭を下げた。
涙は見せない。
笑顔で行って、笑顔で帰って来たいから。