第2章 出会いの春
何だか、不思議な気分だ。
彼氏いない歴=年齢の私の部屋に、男性がいる。
しかも、まるで自分の部屋の様に私の部屋でくつろいでいる。
それにしても、性格はどうあれ本当に整った顔立ちをしている。
きっと大学でもモテるだろう。
ふと時計を見ると、時刻は午後4時半を回っていた。
「よし、5時になったら動くぞ。」
自分に気合いを入れる。
そんな私を徹は不思議そうに見た。
「いつもそうやって時間とか決めて動いてんの?」
「うん、そうだよ。じゃないとあっという間に1日が終わっちゃうから。」
「ふーん。真面目なんだな、お前。」
「普通じゃない…?」
すると、徹は何かを思い立った様に不敵な笑みを浮かべた。
「お前さ、彼氏いたこと無いだろ?」
「な、なによいきなり…。」
「答えろよ。どうなの?」
明らかにモテる人を目の前にして、本当の事を言いたくなかった。
でも、嘘をついても何の意味もない。
話を逸らすため、私は立ち上がった。
「やっぱり少し早いけど夕飯の支度始めようかな…。」
そう言って逃げるようにキッチンへ向かった。
スーパーの袋から野菜を取り出していると、突然背中に温もりを感じた。
徹に後ろから抱きしめられたのだ。
「ちょっと、離して…っ。」
「答えないってことは図星?」
「う、うるさいなぁ…何で徹にそんな話しなくちゃいけないの。」
「俺と付き合う?」
耳元で囁かれ、心臓が飛び出そうになった。
徹は私をからかって楽しんでいるんだ…絶対に。
そう自分に言い聞かせた。
思えば今日は朝からずっと徹に振り回されている。
今まで我慢していたものが、ついに爆発した。
「いい加減にして!!」
私は徹を振り払い、玄関から飛び出した。