第16章 発覚
「お母さん、明日朝一の新幹線で来てくれるって。骨髄検査はお母さんと行くね。」
電話を切った後、徹にそう告げた。
「そうか、良かったな。」
「徹、ありがとう。代わりに話してくれて。」
「ん。だいぶ落ち着いたか?」
「うん。さっきよりは大丈夫。」
ふと、七瀬の顔が頭に浮かんだ。
母が来たら、骨髄検査を受けて、結果が出るまでしばらく学校は休むことになるだろう。
七瀬には…話しておいた方がいいのかもしれない。
「…七瀬に、話そうかな。」
「骨髄検査の結果が出てからでいいんじゃないか?」
「でも、しばらく学校休むと思うし…心配してくれてるしさ。」
そう言うと、徹はスマホをいじり、またポケットにしまった。
「七瀬に17時に駅に迎えに行くってメールした。あいつ、アパートの場所わかんねぇだろ。俺が迎えに行って連れて来るから、お前は部屋で待ってろ。」
徹の行動力に驚きつつ、私はある事に気付いた。
「あ、バイト…徹今日バイトでしょ?17時に駅に行ってここまで連れて来たら完全に間に合わないじゃん。」
「少し早めに駅に行って、マスターに事情説明して今日は休ませてもらうよ。マスターになら話してもいいだろ?」
「うん…でも、しばらくバイトも休むことになっちゃうのか…入ったばかりなのに申し訳ないな。」
「そんなこと気にしてる場合じゃねぇだろ。それに、あのマスターなら大丈夫だよ。」
そして、少しして徹は駅に向かった。
私は自分の部屋に戻った。
店に入ると、マスターがいつも通りカウンターに立っていた。
「あれ?徹君。出勤にはまだ早いんじゃないかい?」
「マスターに話があって。」
幸い、店内に客はいなかった。
俺はカウンターの席に座り、シュリが今置かれている状況を話した。
マスターは悲しげに目を伏せた。
「そうか…シュリちゃんに伝えてくれるかい?」
「なんですか?」
「いつでも戻っておいでって。」
マスターは優しく微笑んだ。